
「どうなりたいか?」が導いた道──お手伝いから始まった植物屋
彼が印刷会社の営業として働いていた頃、ふとした瞬間に考えることがあった。
「自分はどうなりたいのか?」
「自分はどうありたいのか?」
ある日、経営者の本を読んでいたとき、その問いが書かれていた。
それは、ただのキャリアの話ではなく、人生の指針としての問いだった。
「営業としてスキルを磨き続けるのもいい。でも、自分が本当に目指したいのは、誰かの役に立ち、感謝される仕事をすることではないか?」
そんなことを考えていた矢先、知人から何気ない相談を受けた。「オフィスに植物を置きたいんだけど、何を選べばいいかわからなくて…」
彼は趣味で植物を育てていたが、それを仕事にするつもりはなかった。
ただ「役に立てるなら」と思い、お手伝いをすることにした。
いくつかの植物を選び、空間に合う配置を提案すると、知人はとても喜んでくれた。
「こんなに雰囲気が変わるなんて、すごいね!」
それが最初の一歩だった。
好きだから選んだわけではない。ただ目の前の人の役に立ちたい、その思いで動いた結果、次の依頼が生まれ、気づけば植物屋を立ち上げることになった。
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次の依頼は「スタンド花」
仕事が軌道に乗り始めた頃、別の知人から連絡があった。
「知り合いが飲食店をオープンするんだけど、開店祝いのスタンド花をお願いできる?」
スタンド花——開店祝いや舞台、公演祝いなどでよく見かける、大きな花のスタンド。彼はそれまで観葉植物の提案ばかりだったため、一瞬戸惑った。
しかし、「どうありたいか?」と考えたとき、自分は「植物を売る人」ではなく、「人の役に立つ仕事をする人」だと改めて思った。
「どんなお店ですか?」
「贈る相手はどんな方ですか?」
「どういう雰囲気の花がいいですか?」
依頼主に丁寧に話を聞きながら、彼はデザインを考えた。
一般的な赤やピンクの華やかなスタンド花ではなく、お店の雰囲気に合わせ、落ち着いたグ
リーンを活かしつつも、開店の華やかさを演出するデザインを提案した。
「こういうスタンド花なら、店の前に置いてもおしゃれに見えますよ。」
依頼主はその提案に驚きながらも、納得してくれた。
「普通のスタンド花よりセンスがいいね! ぜひお願いしたい。」
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新たな可能性
スタンド花の仕事を引き受けたことで、彼の仕事はさらに広がった。
開店祝いや企業の周年祝いなど、様々なシーンでスタンド花を求める声が増えていった。
「相手の想いに寄り添ったスタンド花を作る。」
それが彼の強みとなり、個人経営の飲食店から大手企業のオープニングイベントまで、さまざまな場面で花を届けるようになった。
植物屋を始めた頃は、ただ知人の役に立てればと思っていた。しかし、気づけば「人の気持ちを花で表現する仕事」へと変わっていた。
「どうなりたいか?」と考え続けた結果、彼は「植物を通じて人の想いを形にする人」になっていた。
そして、また新しい依頼が舞い込む。
「今度、知人の会社が移転するんだけど、移転祝いの花をお願いできる?」
彼の挑戦は、まだ続いていく。
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